「……アサヒ?」
不安を覚えた私は、そっとその名前を呼ぶ。
逃げないように。いつでも捕まえられるように、アサヒの服の裾を軽く握る。
そんなことは気にも留めないようなアサヒは、掴んだ私の手を自身の手で包んでくれた。
「僕はもう行くよ。見つかったらまずいから」
そんなことは分かっている。
私もアサヒにつかまって欲しくはない。
たとえ彼が未成年で、仮に罰が軽いものだとしても、人を刺しているのだ。
それを周りがどう思うだろうか。
暴力事件は数知れず。
なんとなく、それらが引き起こされた概要が想像できてしまうから、私は胸を痛めずにはいられない。
アサヒは、自らのために手を下すような人ではないから。
それはきっと誰かのため。


