「ねえ、アリサ」
その落ち着いた静音に、頭ははっきりと現実へと戻ってくる。
たった今何をしていたのか、自分が情けなくて思い出したくもない。
私は本当に大馬鹿だ。
「今日は満月だね」
その言葉にはっとしてその顔を見つめる。
そんな私にアサヒは苦笑を漏らす。
「もしかして、もう飽き飽き?」
「そんなわけないっ」
戯れるような問いかけに、慌てて首を振って、違う違うと否定する。
そんなことは分かっていると言わんばかりにアサヒは、軽く微笑むと促されるままに続けた。
「今日は何も考えないで。
アリサは僕だけを見ていればいいから」
分かった?と、首を傾けるアサヒに大きく頷いて見せる。
それを確認すると満足そうに、アサヒは私から距離をとった。


