あえて言うべきことではないことを隠し事とは言わないから、彼の秘密がどれだけあるかは私自身、把握していない。
けれどそれは、隠し事は隠し事でも。
嘘、と言うのでしょう?
「でも……っ——」
「アリサ」
食い下がろうとする私の言葉を、静かに制したアサヒはにこりと微笑む。
仮面をかぶった道化師の出来上がりだ。
私の唇に、アサヒの指がそっと当てられる。
先ほど垣間見せたしおらしさとは打って変わっての扇情的な微笑みで、彼は言う。
「先の見えない秘密は何より甘美で魅惑的。
だから内緒。そう、内緒だよ…」
先の見えない、秘密……?
そんな疑問も一瞬で溶けてしまう。
抗議も何も言わせないためだろうか、誘惑的な瞳にまんまとはまってしまう馬鹿な私。


