「そんなに悲しそうな顔をしないで」
ぴくりと揺れる体は、今こそ小さく見えてしまう。
私に嫌われると思った?
でも大丈夫。私は貴方を見捨てない。
何年追いかけてきたと思っているの?
今ならいけると、口調を改めた私を信じられないとでも言いたげに見てくる。
今なら、聞ける?
「ねえ、アサヒ」
大丈夫。怖がらないで。
お願いだから、私を見て。
「まだ何か、隠していない?」
聞いた私の言葉に彼が何を思ったかは知らない。
けれど一瞬の間があったのは確かだった。
だけど。
「何も。僕がアリサに隠し事をしたことは今までないよ。
そうだよね?」
確かに彼は、私に隠し事をしたことはなかった。


