「オルトロスさん、出迎えに来てくださったのですか?」


二つの頭を持つ黒い犬が階段を駆け降りてきた。
大きいし怖い。けど、仄矢は怖がることなく撫でている。


「心配しなくても大丈夫です。まだ気付かれていませんから」


仄矢はオルトロスと会話?出来ている。もしかして、悪い子ではない?


オルトロスは上り終えるまで仄矢の隣にいた。


「護衛、ありがとうございます。これ、お兄さんの分も……」


白い紙袋をくわえて、オルトロスは走り去って言った。姿も見えず、強風が吹いたようだった。

「仄矢、さっきのあれは何?」


「蜂蜜がかかったマフィンです」


それを食べるの!?なんか……可愛いなぁ。


フラフラになっていたけど、少し癒された。
開いたままの大きな入り口をくぐる。


ついにここの主さんに挨拶をしにいく。私は緊張して、汗ばんだ手を組んでいた。