「客人か、六文銭は持っているか?」


「はい」


仄矢は川の淵に立つおばあさんと向かい合うと、硬貨を数えることもせず、じゃらじゃらと手に乗せる。
仄矢は私たちの文も払ってくれた。南天さんとオレガノさんの分もあった。余分に持ってきていたのかな?


「ほい。どうぞ」


橋の途中に付け足された階段を降りる。
足を乗せると舟は揺れる。


他の舟と比べると少し大きくて、屋根がついている。


舟が進みだした。
こんなところに魔力源があるなんて……。ここにいる人たちは、大量の魔力があるって知ってるの?空操禁書のことも知ってるの?


仄矢は気付かれないようにと言っていた。
ここの人は空操禁書に協力しているかもしれない。閻魔様を敵にまわすなんて、恐ろしい……。


それと、魔力源ってどんな感じなんだろう……。タンクに貯蔵されている?強大な魔力が籠った石?
目に見えない、空気のようなものかもしれない。


色々考えている内に向こう岸が見えてきた。


「もうそろそろ降りますよ」


仄矢が立ち上がった。寝ていた南天さんが起きて、あくびをした。


「ありがとうございましたー」


皆お礼を言ってから、仄矢の指示を待つ。


「この階段を上れば宮殿があります。そこで何日かお世話になります」


まさかの宿泊。しかも宮殿。何で地獄に宮殿があるの!?
きっと、かなり凄い人がいる。


大きな階段が、私たちを試すようにかまえている。
見和さんの家の恐怖はここだった。