運命の本

水晶のようなものは大きく二つに割れていた。透明な箱は線まで断たれ、機能は失った、と一目でわかった。


「まずい……最大の魔力源が失われた!」


「これで運命とかの運用は絶望的になったわね……どこかで確保しないと自由に動けなくなるわよ……」


焦る空操禁書たちの声が聞こえる。
今の内に空操禁書に攻撃を仕掛けようかと思ったけど、皆息が切れているし、魔力も尽きた。
もたもたと撤退する空操禁書をただ見上げることしか出来なかった。


「作戦は成功です。これで、大量に魔力を使う空操禁書は運用できません。残りの空操禁書は討伐作戦で減らしていきましょう」


仄矢は苦しそうに眉を寄せながらも口角を上げた。


終わったんだ。
私は目を閉じ、息を整える……。


剣と剣がぶつかる音がする。野太い叫び声と、高速の魔法が風を切る音が……近づいて来ている!


「残党が!?皆さん、疲弊しているとは思いますが、すぐに撤退しましょう!」


剣を地面に突き刺し、仄矢が即座に立ち上がった。


「その必要はない!」


地面を背にして高く飛ぶ人がいた。弧を描いたその人は、スタッと着地した。


「氷裁智さん!」


「ミルフィが何やら怪しげな動きを見せたから、私も調べていたんだ。やはり魔力を盗んでいたか……」


氷裁智さんは音がする方向に剣を向ける。


「皆さん、ここは私たちにお任せください!」


後ろから天網さんが甲冑をつけた兵士を連れて来た。


「ありがとうございます!」


私たちはお礼を言ってから急いで撤退する。
振り返ると冥府の役人が攻めてきていた。


「役人たちの中にも協力者がいましたか……やけくそになって暴れているのか、まだ策があるというのか……」


ただ暴れているだけならいいんだけど……。これ以上の戦いは無理だ。一刻も早く終わってほしい。