【完】『女房狩騒動記』


やがて。

ふらふらと徘徊し回っていた頭巾姿の姫が、白洲に崩れ落ちた。

「…何事ぞ?!」

三成が立ち上がった。

「全宗どの、気付け薬を」

「はっ」

施薬院が白洲へ降りる。

抱えあげた。

「これは…!?」

頭巾の緒が固く結ばれてあってほどけない。

「これでは気付け薬を処方出来ぬではないか」

まごまごする施薬院を見かねた三成が、たちどころに小柄で緒を切った。

すると。

するする、と絹の頭巾が外れた。

「…なんと!」

このときの三成の驚きようは、一同みな初見であったらしい。

青々と坊主に剃られた頭に、美形とは言い難い、出来物だらけをした醜女(しこめ)であったのである。

「これはいったいどうしたことぞ」

姫の相貌に興味を抱いていた秀吉も、覗き込んでから思わず顔を背けた。