「行ってきます……。」


目障りな程眩しい太陽を浴び
私、魔宮凛奈(まみや りんな)は
今日も地獄へ向かう。


学校に行く。ただそれだけのことなのに


一歩一歩が鉛に浸かっているかのように重い。

大丈夫。
自分に語りかける。


私は、強い。
私は、優しくない。


毎日泣いていた私は、
もういない。


正面に赤信号が見える。



「あれ」を見ないように
俯きながら横断歩道に差し掛かった足を止めたその瞬間。


ゾワっと寒気で全身が凍りつく。


原因を探りたくないのに、頭を上げてしまうーー。


横断歩道の真ん中。

血まみれの頭をこちらに向けて哀しそうに見つめる女性と目があった。


「ーーーッ!!!」


叫び声を上げるのを堪え、パッと信号が青に変わったのを確認し


目を合わせないよう
下を向き走り抜ける。


また……また……見てしまった!


ハッハッ、と乱れる息を整え
心を整理すべくゆっくりと歩き出す。


ただ、見えてしまうだけーー。


『この世ならざるもの』が…。


違和感に気付いたのは確か幼稚園に入りたての頃だった。


「ねぇーママ、あそこにいる男の人、変だよ!足がないの!」


「凛奈?何言ってるの?誰もいないじゃない。」

その時は変なの、となんとも思ってなかったのだ。


恐怖心というものか薄かったからかもしれないけどー。


だけどこんな事を何回も言われ、流石におかしいと思ってきた。