ステージ真ん中でウエディングドレスの女子をお姫様抱っこした彼に「ずるーい!」と悲鳴が上がる。すると女子が彼の腕から飛び降りて、ベールを取った。

くっきりとした二重の瞳にピンク色の頬、つやつやの唇。
こんな美人が彼女なら納得だわ。
そう思ったけど、今度は隣の女子が「嘘―! 拓海くん、可愛すぎるー!」と叫んだ。

拓海くん……ってことは男?!
女装だとは思えない可愛さは、この場の女子全員が完敗だと思ったに違いない……。

メイドカフェでの私も、勝てる自信ないや。

「桜井拓海先輩。ヤバいねあの可愛さ。年上女子が虜だってのも納得だね」
「うん、そうだね……」
ため息をついてステージに目を向けるよっちゃんに適当な相槌を打つ。

頭の中に浮かんだ顔。
あんなイケメン、忘れようがない、よね。
私の頭の中では二つの顔が一つになる。

やっぱり。
どう考えてもメガネを割っちゃったお客様は、及川悠斗という先輩と同じ顔だった。