それでも歯車は回っていく2 〜王国滅亡編・上〜

「反乱が起きそうな貴族はほぼ全て、影で操りまくってた。もし私(ファレリア)に何かあっても、フィー(お前)には迷惑をかけたくないって口癖のように言いながらな。

俺はてっきり、妹のことが大切だから、戻って来て嬉しくて、以前に増して仕事をこなしているとしか思わなかったんだわ。

バカだよな。夫だの次期国王だの言われてるのに、大切な人のことすらわかってなかった。

こんな奴が国王って、大丈夫かよ……。」



吐き捨てるように自身に言った言葉。



けど、忙しいであろう仕事や勉強をこなしながら、例えユキナさんの報告ついでだとしても、記憶をなくした私でも会いに来て、嬉しそうな、優しい顔をしてくれていたあの人なら。



「きっと、カイラさんのことを信頼して、裏切ったんだと思います。」



「ど、どういう意味だ?」



信じられない。そんな口調で、一瞬動揺しながら聞いてきた。



「カイラさんが第一王子でいてくれるから、裏切っても国はなんとかしてくれると思ってる……みたいな?

証拠にというわけじゃないんですけど、お姉様が甘えた、自らねだったのは、カイラさん以外いないはずですよね。」



咄嗟に口元を隠したカイラ兄様。やはり、何かしら心当たりがあるらしい。



「以前、言われたことがあるんです。『大切な人が幸せになってくれるなら、自分のことは二の次にだってなることはありますからね。』と。もしあの言葉が偽りじゃないのなら、きっと何らしかの意図があって裏切っています。

例えば、今は悪魔側につくことによって誰か大切な人をを幸せにできる。とか。その大切な人は、兄様かもしれないし、私かもしれない。或いは、他の人かもしれない。」



そうであってほしい。そんなあわよくばの期待を膨らませていく私。けど、カイラさんはハッとした顔で、口元にあった手をバッと、目が隠れるように当てた。