「隠しててごめんね。私は、ヴィルの工作員なの。」



そんなちっぽけなことで、今更謝って欲しくなかった。謝るよりも、生きて欲しかった。悪魔なら、その背中の火じゃ死なないんでしょ!?



「半年に一度、この国の城下外の報告をしていた。勿論、この孤児院のことも、あなたのことも。」



ユキナさんは私の目を見て、私の頰に弱々しく手を触れた。なんでかな、子供って、勘が鋭いんだよ。



「何する気なの?ユキナさん。」



するともう一度抱きしめて、名残惜しそうにゆっくり私を離した。



「上級術式、水波水流」



背中の炎が消えたユキナさんは、私を背に立ち上がった。その背中は、誰よりも大きかった。



「お別れは済んだかいユキ?皆が命を張っている中で出た裏切り者だ。そんな反乱分子は生かしておくわけにはいかない。

でもまあ優秀だった君だ。最後に何か遺す言葉はあるかい?もっとも、誰にも何も残らないけどね。」