「ウェルティフル学園で学習した作法で十分ですから。」



確かに、学園の掲げる教育理念には、将来のヴィーナスを担う者を育成するという項目があったはず。庶民出身者であるなら尚のこと、必然的に礼儀や作法は基本的なことから習うことになる。



「それならまあ…。」



コンコン



渋っていると、ノック音が響いた。



「ゲキ・アレクシアです。」



「入っていいわよ。」



ガチャッ



「失礼します。」



「ゲキ!」



よく考えなくても私の夫になった、第二王子になったゲキ。つい、国軍殲滅隊狙撃本部最低防衛線死守隊(通常狙撃死守部隊)の制服がかっこよくて見とれていた。



前線にいる隊のように動く必要性はないものの、戦線で目立ってはいけないから本来は茶色や緑が普通なんだけど、練習用の中でも今着ている藍色のコートは、ゲキの瞳の色とも相性が良くて、まるでゲキのために作られた練習用制服のようだった。



春夏秋冬コートだから暑そうだけど、一着一着にそれなりの術式が施してあって、逆にこういった服の方が快適だったりする。