トゲを全てとった花をそっと手渡すような言い方に、赤子をあやすように撫でられる手。拭いきれない涙に追い打ちをかけるようで、私は彼の腕の中で泣きじゃくった。



「二人の死っていうのは、フィーちゃんにとっては辛いことのはずだろう。けど、二人の死があったから出会えた人や未来(いま)があるはずだ。

二人は死してなお、誰かを幸せにしている。今の俺みたいにね。」



その間ずっと背中を撫でられている私は、泣きながらもゆっくり、許しを請うように、精一杯の感謝の気持ちを伝えるように、嗚咽交じりに言った。



「私が幸せになれたのは、記憶を消して貴族じゃ無い暮らしをくれたお母様(ファライア様)と

記憶を失って孤児院に行った私が、髪の色や目で差別されても唯一側にいてくれたユキナさん。

陰ながらずっと見守って、ときに導いてくれていたファレリア様。

そして、辛いとき、一人ではどうしようもなくなってしまったとき、こうして側にいてくれる、ゲキのおかげ。」



再び溢れ出す涙と想いへ、『よくやった』そう言われているように私は、先よりほんの少しだけ強くゲキに抱かれていた。



するとファレリア様の足音が一旦遠のいて、再びこちらに歩いてきた。