それでも歯車は回っていく2 〜王国滅亡編・上〜

そのすぐ後で、



「私からも礼を言おう。捕まえてくれてありがとう。」



少し遅れて到着したこの人は今、私の頭を撫でた。



「いつも世話になってるねえ、警備兵のおじさん。」



話し方的に、兵士であることを鼻にかけていないタイプの、接しやすいおじさんなんだと思う。



「これが私のやりがいを感じる仕事でもあるんだよ。それに、ここの方が、ずっと世界が広く見える。」



「様になるねえおじさん、あんたみたいな人がいてくれれば、城下は安泰みたいなもんよ。そんじゃ、仕事に戻るよ。お嬢ちゃんたち、またおいで。今度はもう少しサービスしてあげるからさ。」



バチンとウィンクをすると、手を振って去って行った。



「そうだ、せっかくだし名前を聞いてもいいかな?」



こんなところへ抜け出したと家に知られたら…。そう考えると一瞬口を噤んでしまった。けど、すぐにウェイドが手を握ってくれた。



「ウェイド、ウェイド・ギールです。」



「ヴィオラ、ソルツァート。です。」



「そうかそうか、じゃあ、私も名を名乗ろうかな。」



ギールとソルツァートの名を聞いて驚かない一般人はすごいと思ったときだった。私たちは耳を疑った。



「トウロォー・レン・クラフィネイト。」



トウロォー…クラフィ…



「「ぇええええ!?!?!?!?」」



「しーっ。しぃーーーっ!!」



慌てて口元に人差し指をやった



「なに、そう構えないでくれ。今はただの警備兵のおじさんだ。こうして兵に紛れたりするのは、昔からの趣味の一環でね。」