それでも歯車は回っていく2 〜王国滅亡編・上〜

「止めるよ、ヴィオちゃん。我水精に祈る者…。」



ウェイドが詠唱を始めた。多分、初級の光属性。私が今できるのは、



「初級、術式。精霊力付与(エンチャント)」



最近無詠唱でできるようになった初級の精霊力付与でサポートすること。



「初級術式、光れ(フラッシュ)!ナイス判断、ヴィオちゃん。」



「う、うわぁああ!!!」



ウェイドの術式は、相手を直接攻撃しない。視界を奪った後で、



「はぁっ!!!」



護身術で投げ飛ばす。



「ほい、一丁上がり。」



「ウェイド!!」



手をパンパンと払いながら言う彼に、駆け寄った。私を抱き留めると、頭を撫でてくれた。



「クレープ屋の…。」



「おや?さっきの子どもたちじゃないかい?ありがとうねえ。」



太ももに手をやって、息を切らしながら言った。



「いえいえ、困っている人に手を貸すのは当然ですし、悪い人を捕まえることに協力できて、喜ばしい限りです。」



「おや!なんていい子たちなんだい!」



紳士のようなウェイドの対応に、おばちゃんは感嘆の声を上げていた。



するとすぐに、警備兵が二人ほどやってきた。



「ありがとう、小さな勇者たち。おい、早く立て!」



私たちにそう言って、



「…中級術式、風速(ブースト)」



もう一人が術式を使って二人で彼を連れて行った。