それでも歯車は回っていく2 〜王国滅亡編・上〜

「して。話はなんだったかな。フィーネちゃん。」



「明日、明後日。休暇を頂きたくて。」



少しも眉を動かさずに、どうしてかな?と聞いてきた。



「少し、用事が。」



「わしにも、言えぬ用事かな?」



「はい。」



目を逸らすことのない、沈黙。すぐに目尻は緩くなっていた。



「では、内容は聞かん。確実な休暇をやるとしよう。」



多分、この人は何の用事かを察している。けど、それを敢えて聞かないでいてくれるのもまた、隊長の好かれる理由だ。



「しかし、あんな大きな戦争の後だ。普段から暇な特攻隊にそう大きな仕事は来んだろう。タクト君にでも言っておけば良かっただろうに。なぜ律儀にわしに休暇申請に来たかだけでも、教えくれんか?」



たしかに、影では特攻隊がサボり隊と言われることもある。戦争では活躍するものの厳しい訓練などはなく、毎日自由気ままに過ごすから。



「そうですね。強いていえば、あの方との約束は果たすべきだと私が思うからです。」



「ほう?それはどうして?」



「一度敵対したとはいえ、利用していたと言われたとして、それまでに何度も救われた事実は変わりません。嘘偽りの自分で、あの人に会いたくはないですから。と、いいことを言ってみても実際は、途中で仕事になったら怒ります。って釘を刺されて…術式使用の制限があるとはいえ元のスペックがあるために、もし何かあったら何されるか、もう怖くて。」



苦笑いして答えると、一瞬驚いて口元を押さえて笑っていた。



「いやぁ、すまんな。ちと若い頃を思い出しておった。目上の者を尊敬しておればおるほど、怒られる恐怖も増すものだった。」



その口調は、どこか懐かしむ様子だった。



「さて、次はわしから。報告というよりはお願いだ。初級術式、風(ウィンド)」



書斎から一枚の紙が飛んで来て、目の前の机にヒラリと落ちた。