「おはようございます。」



ヒョコっと扉から顔を出して中を確認すると、その人はいた。



「おろ?フィーネか。なに、丁度良いところに来たのう。」



老眼鏡を外した後光が差しているこの方は、私の所属する特攻隊の隊長。今年で63歳だとか。私から頼んで、余程のことがない限りフィーネの方で呼んでもらっている。



「いえ、私は用事があったので。」



ここは、王宮にある隊長の部屋。っていうか?住み込みの寮。学園の時のような寮と比べると、Tha王宮って感じの内装だと思う。



「なに。先に話を聞こうじゃないか。」



ゆっくりとした動作で書斎から立ち上がり、壁に手をついて歩いて来た。



「ダメですダメです!!ソファーにでも座って!!」



「大丈夫。先の短い老いぼれの心配はせんでええ。若いうちは気づかんもんだぞ。時間というものの大切さが。」



「それとこれとは話が別です!!今は少しでも体調を…。」



「ゲホッゲホッ!!」



「隊長!!」



この人は、誰かのためならと体を張る人だと知る人皆が口を揃えた。事実、先の戦争ではラナフレム陣営で多くの成果を挙げた。最後の仕事だと言い張って、ご老体に鞭を打って出陣してくれた。隊長には経験のためにという口実で、実際は護衛の為。現役学生のトップクラスの数名を同行させた。


でも、聞いた話だと、全盛期と比べ精霊量はガタ落ち。本人曰く、動きも鈍っていたそうで、これ以上は前線どころか戦場に立つのも危うい。こうして、体全体が脆く、弱くなっていることもある。



「無理はしないでください。」



隊の皆が、そう願っている。



「ほっほっほ。頭には入れておくよ。」



けど、責めることができない温厚な性格故、皆一歩下がってしまう。とりあえず、部屋の向かい合うソファーに座らせた。