『私の知る君ならそんなものを望んではいないと言うだろう。


ただ、これだけは忘れないでくれ。

我々は、悲願達成のために沢山の犠牲を払ってきた。そしてその意思は、押しつけているのかもしれないが、今は君に託されていることを。』



拭いても拭いても溢れてくる涙を、両手で何度も擦った。



『正直なところ、肩身は狭く、重いだろう。

だが、君ならやってくれる。その可能性を信じて我らは託すのだ。

胸を張れ、前を向け。過去(いま)よりも、未来(さき)へ行け。

誇り高き悪魔の意思を継ぐ者よ。』



するとオルゴールがボロボロと崩れ、中から無色。いや、灰色の石がついたブレスレットが出てきた。


もしかしてと思いカイラを見ると、無言で頷いた。許可が下りた。だから石に手を触れて術式を発動した。



「初級術式、風雷」



術式をかけると灰色だったはずの石は光を纏い、鮮やかな桜色の宝石へと姿を変えた。



「それ、まるでフィルが普段身につけているブレスレットの色違いだな。」



カイラの言葉でハッとし、予想は確信に変わった。



「とりあえず、王接間に行きます。フィーを呼んできてください。」



「わーったよ。ファレリア・アス・ライナ・クラフィネイト第一王女様。いや、王妃となった、俺のファレリア。」



真剣に言ったファレリアの頭を触れるように2回、おかえりと言わんばかりに軽く触れると、カイラは嬉しそうだった。



そしていつもよりほんの少しだけ軽い足取りで、フィルを呼びに行った。



「確かめなければならないわ。」