「『われらは、いつからこんな風になってしまったのだろうな。手を取り合えば、無駄な犠牲も払わずに済んだのかもしれんな。』」



ポツリと呟いた水神様。



『そうやって、もしも。と考える前に、悪い考えを滅する魔法の使い手としてあり続ける。それが私たち悪魔。will(もしも)を歪ませ、自信を持って強いvil(意思)を持つ。それが、最初の悪魔の理念よ。』



もしもを…意思へ…。



『なんてかっこいいこと言っても実際は、あるときシラクスがウィルって言えないって分かって、ヴィルって発音するの。それをネタに、ヴィル!ヴィル!って言っていたら、いつの間にか悪魔(ヴィル)になっていたの。』



本当はこんなに明るい人だったんだ。表情や態度がなくても、声の明るさがお姉様や水神様と正反対。



『ふぅ。それで、聞きたかったことって何?』



「『いや、その…。』」



うわぁ。モジモジする水神様とかレアだ。レア中のレアだ。



「『なぜ、こんな無意味な戦いをしようと思ったのじゃ?他の戦場では、開幕直後に死者が出ておる。最初は優勢であっても、おぬしらでは数も、力量も敵わなかったじゃろうに。』」



少し、頰が動いた気がした。



「そうね、あるときシラクスが言っていたのだけれど、確率っていうのは0じゃないの。人間の可能性っていうのは、シラクスの予測さえも凌駕する。だから、ファーちゃんがいてくれたから、私たちは自分たちの手で世界の常識を変えようとした。」



さっきまで興奮していたのとは打って変わって、声は弱々しかった。