詠唱しきったことを確認して、ゆっくりと二人を離したファライア様の顔は、どこか満足げだった。
そして立ち上がると、みるみるうちに、黒く縁取られた赤い線が両目から下へ広がっていった。抱きしめていたはずの手の指先にも、立膝をついていた脚にも、その線は広がっていった。
「お母、様…?」
そんな姿になるとフィル様は、小指を掴んで離さなかった。けれどファライア様は、申し訳なさそうに左手で優しく頭を撫でるとスッと指を抜いて、ファレリア様を手招きした。
「ファレリア、いえ、シュラ。あなたにお願いがあるの。」
わかっていたようにゆっくり歩いていくファレリア様の左目は、紫色のヴィルの象徴が映っていた。シュラといったのは、ファレリア様の中にいるヴィルの固有名詞(なまえ)のことだろう。
『どうかしましたか?……と、聞かなくてもわかりますよ。あなたが生まれたその日から一緒にいたのだから。』
明らかに雰囲気が変わったファレリア様。ファレリア様の体を使ったシュラは、差し出されたその手をとってこう呟いた。
『大切な人を守りたいと願うあなたの意思を、ヴィルの王妃が叶えましょう。』
悪魔の王妃と自称(いう)のには申し分ない覇気。けど、禍々しいというよりは、どこか神聖さがあった。それに続いて、ファライア様の中にいた火精が詠唱をした。
『我は火神の補佐。我が主人(あるじ)の願いを叶える為の対価を言え、我らの力で叶えよう。』
そして立ち上がると、みるみるうちに、黒く縁取られた赤い線が両目から下へ広がっていった。抱きしめていたはずの手の指先にも、立膝をついていた脚にも、その線は広がっていった。
「お母、様…?」
そんな姿になるとフィル様は、小指を掴んで離さなかった。けれどファライア様は、申し訳なさそうに左手で優しく頭を撫でるとスッと指を抜いて、ファレリア様を手招きした。
「ファレリア、いえ、シュラ。あなたにお願いがあるの。」
わかっていたようにゆっくり歩いていくファレリア様の左目は、紫色のヴィルの象徴が映っていた。シュラといったのは、ファレリア様の中にいるヴィルの固有名詞(なまえ)のことだろう。
『どうかしましたか?……と、聞かなくてもわかりますよ。あなたが生まれたその日から一緒にいたのだから。』
明らかに雰囲気が変わったファレリア様。ファレリア様の体を使ったシュラは、差し出されたその手をとってこう呟いた。
『大切な人を守りたいと願うあなたの意思を、ヴィルの王妃が叶えましょう。』
悪魔の王妃と自称(いう)のには申し分ない覇気。けど、禍々しいというよりは、どこか神聖さがあった。それに続いて、ファライア様の中にいた火精が詠唱をした。
『我は火神の補佐。我が主人(あるじ)の願いを叶える為の対価を言え、我らの力で叶えよう。』

