「ファレリア、国王、その補佐がいなくなったこと。

新王女、新国王誕生による内政の一定期間の混乱。

軍を招集するための期間……。

よし、今決めた。

その二人の遺体を私がもらう代わりに、今日遺された森(レスト・フォレスト)へ攻撃を仕掛ける予定を、来週にしてあげよう。」



私に近づいて、人差し指を立てながら、曇ることのない笑顔で言った。



「そいつを、女王が決められるわけねぇだろ?それに、攻撃されます、二人分の遺体持ってきます。はいそうですか。なんて、常識で考えてあるわけねえよ。」



玄関から歩きながら言ったカイラ兄様に、一瞬わざと驚いて、笑いながらその背を向けて歩き出した。



「断ってもいいけれど、その瞬間進軍を始めるよ?どうする?新国王。」



立ち止まって、笑うシラクス。



「……。」



「にしても、最初の仕事が国の命運を左右するような判断とはね。カイラ・クラフィネイト。」



悪魔のような……悪魔の笑みを見せるシラクス。けど、お父様やユーマさんが、どんな思いで命を落としたのかわかっているだろうから、どうするかなんて、わかっていた。



「わかった。一週間だ。約束は守れよ、悪魔の王。」



口角を上げて



「ああ、私からそう言ったのだからね。それじゃあ。」



「待て!ファレリアは、無事なんだろうな?」



カイラ兄様は、躊躇うことなく聞いた。



「んー?保証はしない。が、君が心配していたとだけ、伝えておくとするよ。」



悪魔に似ても似つかない笑みで、無詠唱で二人分の遺体を浮かせた。



「ではまた、一週間後に。

最上級術式、悪魔の翼(ヴィル・ウィング)」



漆黒の翼を纏って自身も浮いて、気がつけばもう、その姿は見えなくなっていた。