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満月がヴィーナスを見守る中、その日は突然訪れた。いや、避けては通れなかったと言うのが正しいのかもしれない…。
「フィルは本当にその本が好きなのね。」
目を合わせたら最後、石になってしまいそうな赤い瞳、私と同じように波打っている紫色の髪。私はこの人を知っている。国学史の授業の中で、どの学校でも必須になっている人物。今は亡き
ファライア・アスレイ・クラフィネイト王妃様だ。
「うん、だってこの本はお母様の描いた絵本だもの。」
こちらの水色髪で、短いポニーテールの少女も見たことがあった。彼女もまた幼い頃に命を落としたと言われている
フィル・アス・クラフィネイト第二王女様。
お二人とも、当時の写真が教科書や資料集に載っていたけど、実物(?)を見るのは初めてだったりする。授業で見た写真の中で、短いポニーテールを始めていたのは、5歳前後の時。不運にも亡くなったとされているのも5歳だから、今見ているのはフィル様が5歳のときだろう。
「ふふっ、フィルはいい子に育ってくれたわ。私の時とは大違いよ。」
上品に笑った顔は、フワリと乗せられた手には、どこかファレリア様の面影があった。親子だから似ていて当然か…。
頭から手が離れたフィル様は、撫でられてた頭に両手を乗せて、満面の笑みを見せた。
けど突然、悲劇が襲う。私にはそれが直感的にわかった。
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満月がヴィーナスを見守る中、その日は突然訪れた。いや、避けては通れなかったと言うのが正しいのかもしれない…。
「フィルは本当にその本が好きなのね。」
目を合わせたら最後、石になってしまいそうな赤い瞳、私と同じように波打っている紫色の髪。私はこの人を知っている。国学史の授業の中で、どの学校でも必須になっている人物。今は亡き
ファライア・アスレイ・クラフィネイト王妃様だ。
「うん、だってこの本はお母様の描いた絵本だもの。」
こちらの水色髪で、短いポニーテールの少女も見たことがあった。彼女もまた幼い頃に命を落としたと言われている
フィル・アス・クラフィネイト第二王女様。
お二人とも、当時の写真が教科書や資料集に載っていたけど、実物(?)を見るのは初めてだったりする。授業で見た写真の中で、短いポニーテールを始めていたのは、5歳前後の時。不運にも亡くなったとされているのも5歳だから、今見ているのはフィル様が5歳のときだろう。
「ふふっ、フィルはいい子に育ってくれたわ。私の時とは大違いよ。」
上品に笑った顔は、フワリと乗せられた手には、どこかファレリア様の面影があった。親子だから似ていて当然か…。
頭から手が離れたフィル様は、撫でられてた頭に両手を乗せて、満面の笑みを見せた。
けど突然、悲劇が襲う。私にはそれが直感的にわかった。

