「器が10になったらあの儀式をやらないといけないことくらい、王女の君ならわかっているだろう?どいてくれないかな?」



苛立ちを見せた悪魔の王に、ファレリア様はどくことも、一歩引くこともしなかった。



「私は、彼女が大切だから。私は、彼女の意見を尊重するわ。」



この時私は、私を大切に思ってくれているから、ユキナさんの意見に賛成といった意味で捉えた。



「どいつもこいつも…これじゃあ今日は水神祭じゃなくて裏切り&処刑祭りだね。

いいよ。私としても、裏切り者はあまり出したくないんだ。ただ、この世界の保証はしないよ。」



再びシラクスは浮き上がった。



「どうせ世界はいつか終わるもの。フィーを犠牲にしてまで生きても、私は後悔しかしないだろうから。そんなことならいっそ、最後の瞬間までフィーといた方が、私は幸せよ。」



彼に背を向けて、私の方へ歩いて来た。



「今日のところは引いてあげるけど、いつか君自身が器として役割を果たそうとする日が来る。それまでの時間を有意義に過ごすといい。

今日この日を境に確実にこの世界の歯車は、狂い始めるけどね。」



その姿は見えなかったけど、楽しそうなその声はそれっきり聞こえなかった。



「フィー、戻りましょう。大丈夫。あなたが悪いわけじゃないの。悪いのは、この不情な世界…。」



そしてファレリア様から、光が差し込んだ。眩しさのあまり目を閉じると、意識が王宮に戻ってきていた。