「『ファレリア様』が…戻って来ることはないんですか?」



この人は、お姉様の仮面を被った偽物。正確には、お姉様とシュラが混ざった状態。



「どういう意味で、でしょうか?」



「両方の意味で、ですよ。」



今は多分、シュラという方で間違いない。だから、お姉様はいつ主人格になるのか。そして、いつヴィーナスに帰って来るのか。



「そうですね、かえることはないでしょう。とだけ言っておきます。」



流れるのは、沈黙という名の張り詰めた時間。



今転移したら?



跡をつけられて最悪そこも巻き添え。



今ここにいる6人で攻撃する?



勝機はあるかもしれないけど、相手はあのお姉様の体を使った悪魔。しかもそのトップ。仮に倒せたとして、何人生き残れるか。



考える。私たちは今、何をするのが最善手か。



「はぁ…せっかくお話をしに来たのに、これじゃあ普段と何も変わらないじゃない。ライちゃんもライちゃんだったけど、娘も娘で二人共そっくりね。

一度他人(ヒト)を疑いだしたらとことん疑い、信じればとことん信じるところとか。

いえ、或いは人間の性(さが)なのかもしれないわね。悪魔(バケモノ)にはない何か…。」