それでも歯車は回っていく1 〜ウェルティフル学園編〜

ナルが叫ぶとポツリ、ポツリ。と、この床を濡らしては乾いていった。



「お前の家と、お前の兄さんと、お前自身を守るためだよ。」



優しくそういうと、ナルはハッとした。



「無詠唱特殊異能力者がいるっていうだけでその家の価値はぐっと上がる。

卒業された元生徒会のお二人やクラン家、うちだってそうだ。」



涙をゴシゴシ拭ってはいるけど、僕の話はちゃんと聞いてるみたいで安心した。



「今の時代、兄より優秀じゃいけないって言われてる。

けど、弟だって息子には変わりないんだ。

自分の子供を愛していない親なんているはずないんだよ。」



うちは貴族の中で結構特殊な家だけど、ナルのようにちゃんとした家で育つと、どうしても親は長男以外のことは後回しになってしまう。



「俺、父上から術式をもらえたとき、すごく嬉しかったんだよ。

こんな俺でも、アスカ家の人間として認められたんじゃないかって。だから努力した。

難しい精霊力操作だってやって、今の俺がいる。」