川のせせらぎ。
カラスの鳴き声。
人々が行き交う音。
目を閉じていると、普段見逃しがちなささやかな物音がはっきり耳に飛び込んでくる。
柔らかな衣擦れの音。
大好きな香(こう)の匂い。
それが優しく近づいて来るのが分かったから、不意に抱き締められても毬はさほど驚かなかった。
むしろ、息を呑んだのは周りにいた人々だ。
人嫌いで有名な龍星が、姫君をその腕に抱き寄せているのだ。それも公衆の面前で。
「こんなところに独りでいたら、攫われますよ」
「龍が攫って」
毬は瞳を開けて龍星の胸に頬を寄せた。
この迷いや不安ごと、龍星が攫ってくれればどんなに良いだろう。
「いいよ。目を閉じて」
目を閉じると、ふわりとした柔らかい何かに包まれた気がした。
カラスの鳴き声。
人々が行き交う音。
目を閉じていると、普段見逃しがちなささやかな物音がはっきり耳に飛び込んでくる。
柔らかな衣擦れの音。
大好きな香(こう)の匂い。
それが優しく近づいて来るのが分かったから、不意に抱き締められても毬はさほど驚かなかった。
むしろ、息を呑んだのは周りにいた人々だ。
人嫌いで有名な龍星が、姫君をその腕に抱き寄せているのだ。それも公衆の面前で。
「こんなところに独りでいたら、攫われますよ」
「龍が攫って」
毬は瞳を開けて龍星の胸に頬を寄せた。
この迷いや不安ごと、龍星が攫ってくれればどんなに良いだろう。
「いいよ。目を閉じて」
目を閉じると、ふわりとした柔らかい何かに包まれた気がした。


