毛艶の良い馬が、冷たくなって倒れている。
霊気に当たっていることは、一目で分かった。
龍星は手をかざして呪を唱える。
不自然に空気が揺れた後、馬がゆっくりと瞳を開いた。
「翁、後はお任せします」
言い捨てるように言うと、龍星は足早に馬舎に併設してある小屋に向かった。
毬は相変わらず少年のような着物を纏い、横たわっている。
血の気の引いた唇、硬く閉じられた瞳。
雅之はどうすることも出来ず、心配そうに彼女を見守っている。
「医師の所見では、怪我はないとのことだ」
龍星を見て、そう告げた。
龍星は何も答えず毬の小さな手を掴み、たまらず胸に抱き寄せた。
薄い呼吸。
低い体温。
遅い脈拍。
小さな身体で。
小さな手で。
どれほどの人を心配し、どれほどの人を救う?
屈託の無い笑顔で。
深く広いその心で。
「毬」
龍星はたまらず耳元で愛しい人の名を呼んだ。
もちろん、反応は無い。
折角、彼女がその手を、心を、全てを自分に向けてくれたのに。
……そのとき、俺は何をした?
龍星は毬の髪に顔を埋める。
その頬を、思いがけず涙が伝った。
霊気に当たっていることは、一目で分かった。
龍星は手をかざして呪を唱える。
不自然に空気が揺れた後、馬がゆっくりと瞳を開いた。
「翁、後はお任せします」
言い捨てるように言うと、龍星は足早に馬舎に併設してある小屋に向かった。
毬は相変わらず少年のような着物を纏い、横たわっている。
血の気の引いた唇、硬く閉じられた瞳。
雅之はどうすることも出来ず、心配そうに彼女を見守っている。
「医師の所見では、怪我はないとのことだ」
龍星を見て、そう告げた。
龍星は何も答えず毬の小さな手を掴み、たまらず胸に抱き寄せた。
薄い呼吸。
低い体温。
遅い脈拍。
小さな身体で。
小さな手で。
どれほどの人を心配し、どれほどの人を救う?
屈託の無い笑顔で。
深く広いその心で。
「毬」
龍星はたまらず耳元で愛しい人の名を呼んだ。
もちろん、反応は無い。
折角、彼女がその手を、心を、全てを自分に向けてくれたのに。
……そのとき、俺は何をした?
龍星は毬の髪に顔を埋める。
その頬を、思いがけず涙が伝った。


