「龍星」
目の前で起こった出来事に、一瞬照れてしまったが、それでも雅之は口を開いた。
「説教なら聞きたくない」
「説教できる立場じゃないさ。
ただ、帝が」
「あの男?」
龍星は訝しげに顔をあげた。
そういえば、あの男、出掛けに何か意味深なことを口にしてはいなかっただろうか?
そもそも、千を娶ったときですら【あの人】に似ているから捕まえたと公言して憚らなかった男だ。
龍星は眉間に指を当て、ぐらつく感情を飲み込み思考を巡らせる。
ばらばらだった欠片が集まって一つの形を作り上げていく。
【あの人】というのはこの場合【毬】のことを指すのではあるまいか。
帝は東宮時代嵐山の御用所に足しげく通ってなかったか?
毬は長いこと嵐山に住んでいたはずだ。
二人の接点があっても不思議はないはずだ。
……毬……
今朝まで隣で寝ていたのに。
さっきまで、腕の中に居たのに。
あの愛くるしい瞳で、真直ぐに龍星のことだけを見ていたのに。
離れたくないと言って、泣いていたのに。
自分のことを好きだといって、ぎこちなく接吻(キス)までしてくれたのに。
龍星は胸騒ぎと息苦しさに、眉間に皺を寄せずにはいられなかった。
ぎゅっと、手の中のかんざしを握り締めた。
目の前で起こった出来事に、一瞬照れてしまったが、それでも雅之は口を開いた。
「説教なら聞きたくない」
「説教できる立場じゃないさ。
ただ、帝が」
「あの男?」
龍星は訝しげに顔をあげた。
そういえば、あの男、出掛けに何か意味深なことを口にしてはいなかっただろうか?
そもそも、千を娶ったときですら【あの人】に似ているから捕まえたと公言して憚らなかった男だ。
龍星は眉間に指を当て、ぐらつく感情を飲み込み思考を巡らせる。
ばらばらだった欠片が集まって一つの形を作り上げていく。
【あの人】というのはこの場合【毬】のことを指すのではあるまいか。
帝は東宮時代嵐山の御用所に足しげく通ってなかったか?
毬は長いこと嵐山に住んでいたはずだ。
二人の接点があっても不思議はないはずだ。
……毬……
今朝まで隣で寝ていたのに。
さっきまで、腕の中に居たのに。
あの愛くるしい瞳で、真直ぐに龍星のことだけを見ていたのに。
離れたくないと言って、泣いていたのに。
自分のことを好きだといって、ぎこちなく接吻(キス)までしてくれたのに。
龍星は胸騒ぎと息苦しさに、眉間に皺を寄せずにはいられなかった。
ぎゅっと、手の中のかんざしを握り締めた。


