「智悠くんは、悲しいね……」



呟いた言葉は、空虚な天井に消えた。


目を閉じた彼は、酷く美しかった。


初めて伝った涙が、彼の頬に伝う。


彼は笑んでいた。


柔らかい黒髪を撫で、頭を膝にのせた。



智悠くん、もういいよ。


もう、無理に笑わなくていいんだよ。


もう、君が悲しむことは無い。


もう、君は休んでいいんだよ。



ねえ。


だから。


今はゆっくり。




「────おやすみ。」




額に唇を寄せて、空を仰いだ。


真っ白な天井。


赤く甘い世界で、君は静かに眠っていた。




ああ。


綺麗だ。




愛していたよ。


愛してたんだ。


だから。


もう、悲しまないで。


空はここにある。


私も、ここに存在してる。


安心して、ゆっくり。


おやすみなさい。





ねえ、こんな私達は。


間違ってますか?





【───僕を、愛して。】



泣きそうな顔をした少年が。


幸せそうに、今、笑った。





────智悠くんは、馬鹿だね。


零れた涙は、彼の赤と混じりあった。




──Fin──