彼が憎かった。


彼が、怖かった。


なのに、私は、いつの間に。


彼を、求めていた。


彼が、欲しかった。


彼を、愛していたんだ────。


冷たくなった体に、そっと触れた。


もう、私を優しく撫でる指先は動かない。


もう、私を抱く彼はいない。


白い肌に、透き通る赤。


瞬間、今までつめこんだ感情が溢れ出た。


涙なんかじゃない。


代わりに出たのは、



「───────っっ!!」



声にならない叫びだった。


愛していた。


愛していた、のに。


彼は儚く散ってしまった。




「っ、うぅっ、ひっく……あぁっ──」




智悠くん。


智悠くん。



君は、なんて儚く。


そして、どこまでも可哀想なんだろう。


どこまでも、不器用な愛の形だった。


どこまでも、彼は歪んでいた。


不憫だ。


そう言って人々は、流すのだろう。


彼は、ただ、愛されたかった。


ただ、それだけなのに。


どうして。


どうして。


どうして私は────



「っ、ごめんっ、ごめんねっひっく……ううっ」



謝りきれない後悔に、嗚咽を漏らした。


彼は今、どんな顔をしているんだろう。



孤独に涙を流してる?


怒りに顔を歪ましている?


嬉しさに顔を綻ばせてる?



いや。


彼はきっと。


また、あの時のように。


悲しく笑うのだろう。



【僕は独りが好きなんです】







────矛盾。





ねえ、貴方は。