何も言葉を発さない私たちに、タクシーの運転手さんの方が気まずそうだった。
数分の沈黙を乗り越え、まだ人が少ない地下鉄駅に車は停まる。
崇哉は何も言わずに千円と少しの運賃を払っていたから、私も財布を出すべきか迷ったけどやめた。なんとなく、そうすることが面倒くさく感じて。
「聡美」
あ、これでお別れか。ってなんとなく察して、うんと間の抜けた返事をする。
多分もう崇哉は私に会わない。
私も多分連絡しない。
「最後に朝食でも食べて行こうか?」
だから予想外の提案にちょっとびっくりした。
することをして、話すこともなくなった私たちに、崇哉が設けようとしたその時間になんの意図があるのか分からずに。
地下鉄駅に入る前に、ふと崇哉が目を向けたすぐそばの喫茶店は、高校時代よく二人で行った学校近くの喫茶店によく似ている気がした。

