ここは、明治二十年、鹿鳴館、偉い人が集まる場所、僕もその一員、だから胸を張る! 頭の中で呪文のように今の状況を呟く。 優介は由緒ある門真家の長男。 そろそろ隠居を、と考える父の代わりに鹿鳴館の集まりに出席していた。 ただ、初めての一人出席で、緊張していたのだ。 「よっ、優介」 「将太!」 聞き慣れた友人の声に、ぱっと振り向く。 「疲れてんな」 「そういう将太は慣れてるね」 「まあな」