友達になろうって俺に言った次の日から、彼女はさも当たり前のように俺に話し掛けてくれるようになった。

あんな妄想をしてしまった側からすると、それはもう申し訳ない気持ちになることで。

でもそれを正直に話せる技術なんて俺は持ち合わせていないし、回避するっていうのもなんだかおかしな気がした。


だから結局、俺はマドンナに甘える結果となってしまった。


さすがに自分から話しかけるっていうのはできない。

だけどマドンナが話し掛けてくれる時は、思考停止なんてせずにすぐ返事ができるようになった。


すごい進歩だと思える。

ちゃんと返事ができるようになったっていうのも、マドンナとの会話が日常になったっていうのも。

以前までの俺は、ただ見つめているだけだったのに。


俺がぼーっとしている間に、世界は確実に動いている。

まるで俺は、その流れに置き去りにされているようだった。



「昨日、偶然中学の時の担任に会ったんだけど」

「うん」

「激太りしてて、おまけに髪の毛がさみしいことになってて。私はどういう反応をすればいいのか分からなかった」


彼女との会話は普通に楽しくて。

俺はいっつもマドンナの口から紡がれる言葉に聞き入ってた。

彼女はいつでも笑顔で、見ているこっちが幸せな気分になれた。