何かのニュースで、人間が恋に落ちる早さはわずか0.2秒っていうのを聞いたことがある。

前はなんとも思わなかったのに、今の俺はそのことにとっても納得できる。

俺自身、少し違う目でマドンナを見て、半日で好きになってしまったんだから。


正直な話、何がきっかけで落ちたは分からないが。

まぁたぶん落ちた早さは、0.2秒くらいだったんじゃないだろうか。



「び、美術科、準備室…?」

「そうだ。後よろしくな」


いやいやいや。先生、爽やかな笑顔を見せないでください。

すぐに背中を向けないでください。


忘れ物を取りに来たのがいけなかった。

あのまま学校を出ればよかったんだ。


「で、んわ…」


かばんの中から携帯電話を取り出す。

画面に表示させるのは“中田健人”の番号。


『何ー?ノート見つからないのー?』

「…美術科準備室ってどこ?」

『は?』

「宮崎先生に捕まった…。先帰ってて」


俺が事の経緯を説明すると、いい気味!って笑う健人の声が聞こえて、腹が立ったので電話を切ってやった。


「(なんで、俺が…)」


こういうのは、授業中に騒いでる健人が頼まれることだ。


俺は自分の運の悪さを呪った。