「そうでしたか。それでお客様がお話されてから席に戻られて、藤崎様の姿が見えないのに気付かれるまでの時間はどのくらいだったんでしょうか?」
「5、6分とかそんな程度だったと思います」
「そうですか…。そんな短い時間で…」
店長は美希の言葉に考え込み、ウエイターも首を傾げ、その場に沈黙が流れる。
「お連れ様からも直接、キャンセルとかの連絡も入ってないんだよな」
沈黙を破るように店長がウエイターの水島に問い掛ける。
「はい。他の者にも確認しましたが、なかったようです。
予約の電話は私が受けましたが、藤崎様ご本人でしたから、どなたがご一緒の予定だったのかもわかりません」
「クリスマスだし、もしかしたら女性の方とか?…」
「どうでしょう?
最初、個室はあるかと聞かれました。
ありません、とお答えすると、できるだけ人目につかない席で、という事でした。
もし、女性だったとしても、男性同士にしても、有名な方なので周りを気にされるのは当然だと思い、少し席を奥に移動させて仕切りを作ったんですが」
「う〜ん…。せめて連れの方の連絡先でもわかれば…と思ったんだがな…」

