掌を見ると、傷口の上が土や砂利で汚れていた。



放り出された扉の外は、鬱蒼とした森の中だった。

それは見渡す限り、頭上高く葉が生い茂る森で、それ以外の物は何も見えない。
慌てて振り返ると、さっきまで居た扉の中のあの店は、正面の大通りから眺めた瀟洒な店構えとは全く違う朽ちた外観に姿を変え、静かに佇んでいた。

アキは信じられない光景に、起き上がることも忘れて暫し呆然としていた。


この店は都会のど真ん中にあり、周りにはビルや店舗などが建ち並んでいた。
それはかなり広範囲に及んでいて、街全体がコンクリート・ジャングルだったのだ。

木などといえば、観葉植物か、ビルや店舗の前に人工的に形良く植えられた程度で、自然の樹木が生息する場所などなかった筈だ。