アキは、自分の前に立ちはだかる、大きな扉を睨みつけた。

扉に両手を着き、足を踏ん張り、大きく息を吸う。
そして力の限り、その扉を押す。
しかしそれはびくとも動かない。

何度も、何度も、試みてはみるが、扉が動く気配は全くなかった。


もう一度、拳を握りしめ、大きく息をし、今度こそ!と決心して、歯を食い縛り、体中の力を両腕に込める。

扉が開くか、腕がへし折れるか、二つに一つくらいの覚悟だった。



やがて、少しの手応えの後、ギギギーッ…と鈍い音を立て、扉はゆっくりと開いた。
全体重を込めて押していた勢いで、アキは扉の外に放り出され、転倒した。


「つっ!…」

咄嗟に目の前の地面に手を着くと、さっき掌に負った傷の中に、砂利が入り込むのを感じた。
傷口が開いたのだろう…さらに痛みが増したような気がする。