ハルは、ゆっくりと目を閉じる…。
アキは、俺の命が犠牲になり自分が生かされていることを知ったら、きっと嘆き悲しむだろう。
けれど、そもそも記憶に残らないのであれば、
“ 俺という人間は居なかった ”
“ 二人は出会わなかった ” ということになる。
アキの中から、自分の記憶の一切が消えてしまうのはとても辛い。
俺がもし死んでしまったとしても、せめて覚えていて欲しい…
本当はそう思う。
でも…
守りたい。
彼の命も、そして心も……。
悲しみも苦しみもない世界で、いつも笑って、幸せでいて欲しい…。
今までの記憶が全て消えるのなら…
アキを愛しているこの男のことを、自分の意思で愛したと思えるのなら…
アキはきっと幸せでいられる筈だ。

