Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜



「アキを…ただ犬死にさせたくはないだろう?…」

「俺が…抵抗…すれば、アキを…殺…す、と言う…のか…」

ハルは、呼吸もままならない状態で、声を絞り出す。

「そうだな。自分のものにならないのなら、生かしておきたくはないからな」




「そん…な、身…勝手な!…」

「何とでも言うがいいさ」

ハルは、唇を噛みしめる。


「どうする?お前次第だ。アキの命は、お前の気持ちにかかっている。アキを犠牲にして自分が助かるか、命をかけてアキを守るか、二つに一つだ」

デイビット伯爵が強い眼差しを向け、ハルに問いかける。

「少しだけ時間をやるから考えろ」

彼がハルの首から手を離すと、身体の硬直は解け、ハルは地面に腕をついて激しく咳込んだ。