Phantom (ファントム) ~二人の陽人〜



そして“ 素材 ” として彼に惚れた私は、同時に恋に落ちていた。
彼を自分のものにしたい、強くそう願った。

ヒットのお礼にと食事の席を設け、その後も何度か誘ったりアプローチしたつもりだったが、反応が薄くてね…。
いや、でもこれは、ただ薄いんじゃなく日本人特有の気遣いで、本当は私を拒否したいのだと気付いた。
きっと何度アプローチしても、普通の手段では、彼は私の手に堕ちることはない…そう思った。
だから、強硬手段に出ることにしたんだ」

ハルは、信じられない表情で男の顔を振り返ると、ただ見つめていた。



「彼をどうしても私のものにしたい。 それには、お前の血が必要なんだ」

デイビット伯爵はハルの首筋を人差し指でなぞり、耳元で囁くように言った。

「アキをお前のものに?俺の血が必要?
…いったい何を言ってるんだ」

ハルは身を捩り、その手を払い除ける。