そして、オファーを受けてくれた彼に最初に会う前日は、何年か振りの緊張を味わったよ。
自分で笑ってしまうくらいにね。
まるで初デート前の少年のようだった。
こんなに気分が高揚する自分がいることを忘れていた。
撮影場所は都内のレストランを貸し切って行った。
お前が彼とディナーをしようとしていた『clair de lune』(クレール・ド・リュンヌ)だよ。
知らなかったかな?」
「え?あの店が…。」
「店の内装に他のインテリアを持ち込み、装飾を加えたからね。
映像だけでは気付かないこともあるだろうな。
彼もただ撮影場所として連れて来られたと思うから、あの店に着くまで気付いてなかったかも知れないな。
昔の貿易会社を改修しただけあって、私の好きだった時代の重厚で落ち着いた雰囲気が気に入ってね…
そこで彼がどう動いてくれるのか、とても楽しみだったよ。

