「ハルーーーッ!!!」

アキは金縛りに遭ったままの身体で、力の限り、名前を呼んだ。
けれど、返事も返って来なければ、いくら辺りを見回しても、その姿もどこにもなかった。



叫んだ後に引き攣るように呼吸をすると、突然アキの身体の呪縛は解け、膝はガックリと折れて、掌は冷たい床に落ちた。


コウモリ達が、まるで嘲笑うかのようにアキの目の前を飛び回り、そして一羽、二羽、と消えて行き、全てが姿を消した。

テーブルの位置は乱れ、何脚もの椅子が倒れ、ツリーの枝や飾りも壊れて落ちて、コウモリの羽毛と共に床に散乱している。



全てが消えてしまうと、静寂がアキを包み、ただ暖炉の火がパチパチと燃える音だけが響いていた。

「ハル…いったいどこに…。アイツ、いったい何なんだ!」

悲しみと怒りが同時に押し寄せ、アキはドンッと拳で床を殴る。

アキの瞼の奥に、涙が押し寄せて来る。
しかし、泣いている場合ではない。
ハルは、必ずどこかにいる筈だ。