頭上を飛び交うコウモリをかわそうとして身を低くした途端、ハルは椅子の足にぶつかり、転倒した。
急いで半身を起こし、立ち上がろうとした時、とても強い力で肩を押さえつけられた。
「うっ…」
ハルが身体を捻り見上げると、瑠璃色の瞳の男に、背後から左肩を押さえられ、右手で顎の下を羽交い締めにされていた。
その様子を見たアキが叫ぶ。
「ハルーーッ!!」
「アキ!来ちゃダメだ!頼むから逃げてくれ!」
…うるさいっ!!
お前一人残して逃げられるかよ!
アキは尚もコウモリの襲撃をかわしながらハルに駆け寄る。
「お前、誰だ!ハルから手を離せーッ!」
アキが近づいて来るのに気づいたデイビット伯爵は、右腕でハルを押さえたまま、マントの襟を立てて顔を隠した。
やっとハルの近くまで来たものの、コウモリの大群は容赦なくアキの回りを飛び交い、邪魔をする。

