アキが腕時計を覗くと、約束の時間を5分だけ過ぎていた。
ハルはもう席について待ってるな…
そう思いながら石畳でできたような外階段を上がり始める。

途中でドアボーイと目が合い、微笑んで会釈をされたので、アキも軽く頭を下げた。



その時、足元が大きくグラリと揺れた。

…地震か?…

思わず辺りを見回す。
階段から見下ろした賑わう街中には、何の変化も感じられなかった。

ただ足元の揺れはすぐ収まったのに、景色が少しグラついて見えた。

今の揺れのせいか…
アキはそう考えながら、視線を扉の方に戻した。


その時、一瞬、大きな光に包まれた。
目の眩むような光はすぐ消えたが、あまりの眩しさに、視界に映る筈のものが数秒霞んで見えなくなった。

稲光?雷なんか鳴ってなかったよな…
だいたいこんな時期に珍しい…




ドドォーーーーン!!!

強烈な光に包まれた直後、
まるで腹の中をえぐられるような轟音がして、地響きがアキを襲った。
足元から身体全体を大きく揺さぶられ、咄嗟に階段の手摺に掴まり持ち堪える。

大きな揺れの衝撃で、アキがかけていたサングラスが外れ、階段を転がって行く乾いた音が聞こえたが、それはすぐに耳から消えた。