ハルは、一度ギュッと目を瞑ると、やっとのことで男から目を逸らし、慌てて店の中を見渡した。
…何なんだ!こいつらは…。
いったい何が起こってるっていうんだ?!何が何だかわからない。
でも、このままでは、とんでもないことに巻き込まれる。
それだけは確かだ。
とにかく逃げなければ…
出口、出口はどこなんだ!
薄暗い店の中、最初に現れた男達が、身にまとったマントを翻しながら、ハルの視界を遮るように迫って来た。
咄嗟に逃げようと踵を返すと、その方向からも別の黒マントの男達が迫って来た。
全く言葉を発することもなく、男達はただハルを追い掛けて来る。
とにかくやみくもに逃げ回ることしかできない。
壁にぶつかり、テーブルや椅子に足を取られ、よろけながら逃げ惑う。
「来るな!やめろ!」
男達が掴みかかろうとするのを、腕で振り払いながら、ハルは尚も逃げ回る。
デイビット伯爵は、その様子をただ冷酷な表情で傍観していた。