そして、天井から吊り下げられたライトが数回チカチカと点滅した後で全て消え、店内は途端に薄暗くなった。

店の中程の壁の下にある、時代を感じさせる暖炉の火だけが、ゆらゆらと揺らめいて辺りを照らしていた。



「何だよ…これ…」

突然の異変に、痛み続ける頭を抱えたまま辺りを見回すハルの目は怯えた。






「デイビット伯爵、連れて来ました」

色白で痩せ型の若い男が、いかにも威厳のありそうな椅子の後ろ姿に声をかける。

「そうか…手落ちはないだろうな」

「はい。誰にも見られていません」


その男は名前を呼ばれ、ゆっくりと椅子から立ち上がり、振り返る。
上から下まで黒づくめの服に黒のマントのようなコート。
デイビット伯爵と呼ばれたその男は、長身で透き通るような白い肌、栗色の巻き毛、とても端整な顔立ちで、瞳の色は深い瑠璃色に輝いていた。


そして彼は、ゆっくりと店の中へ続く扉の前に立った。