そしてハルは、驚きの余り、カッと目を見開いた。



ついさっきまで、ほぼ満席状態だった店の客が、一瞬にして全て消えていた。



家具やインテリアやクリスマス・ツリーなどはそのままに、まるで閉店後の店内のようにガランとしている。


たった今、話したばかりの女性達も、
家族連れも、
カップルも、
老夫婦も、



そして…

テーブルの上の料理も、
ワインが注がれたグラスも、
カップルのプレゼントのラッピングも、

客だけでなく、何もかも全部だ。



ハルがほんの数分前に見たばかりの、いろいろな人生の詰まったであろう人達と、その人達に暫し安らぎや幸福を与える物たちの一切が、何もなかったかのように存在を消した――。



自分一人だけを残して…。