ふと、笑顔のまま見送っていた美希達の背中が、一瞬大きく揺れたような気がした。

「…ん?…」

ハルは意識して瞬きをしながら、彼女達の後ろ姿を目で追う。
続いて、ハルの耳の奥でキーンと小さな音が聞こえ始めた。

…耳鳴り…?

その耳障りな音はどんどん大きくなり、やがてそれは、ザザザザ…と不快なノイズに変わる。



「嬉し…い。もう…私、手…洗え…な…いよ」

「良かっ…た…ね!…ハル、すっご…く…優…しかっ…た…し…」


美希達の会話が、ノイズに混じり途切れ途切れに聞こえた。
そして凝視したその後ろ姿は、まるで映像が乱れたテレビか何かのように、無彩色の横線が無数に入っては消え、途切れては浮かび上がる…という現象を繰り返す。