「ねぇねぇ…あれ、藤崎陽人じゃない?絶対そうだよねぇ?!」
「えっ?」
「うっそ!」
テーブルで料理を待っている女子大生三人組の一人、美希が、ハルの存在に気づいた。
然り気ない隠し方の落とし穴なのか、ハルの座った席から斜めの位置の席の彼女からは、観葉植物の葉の隙間から、ハルの横顔が見えたのだった。
「東京に来て、誰か芸能人に会えないかな~なんて思ってたけど、まさか一番好きなハルに会えるなんて!
夢みたい!ねえ、握手して貰えないかなぁ」
興奮気味の美希の、真っ直ぐに伸びた長い髪が、二人の友人を交互に見ながら話す度に、ふわりふわりと揺れる。
「え〜?プライベートだったら悪いよ。断られるかもよ。そしたら印象悪くなるじゃん。好青年に見えてたのに意外に冷たかった、とかさ。
心の中で王子様にしておいた方がいいんじゃないの?」
ショートカットの理知的な雰囲気の友人、梨香が心配そうに嗜める。

